どこかに「サスペンスタッチのラブストーリー」と表現されていましたが、まさにそんな感じです。これと「光をなくした女、闇を抱える男〜殺人事件からはじまった不思議な共同生活〜」という、基本的かつ分りやすいキャッチコピーで筋は想像がつくとおもいます。
あ、想像ついていいんですよ。自分にとって映画で重要なのは画と演出ですから。
さて今回印象に残ったのは、全編にただよう主人公の暗さを出すために設定として選ばれた土地が「上毛電鉄 大胡駅近辺」ってという点。上手いなあと思いました。
>>こんなところ。
上のGoogleMapを縮尺を変えてみると分るように、いわゆる「北関東(群馬県前橋市)」です。
突然思い出しましたが、「リリイ・シュシュのすべて」の設定も、ここからそう遠くはない栃木県足利市です。
どちらも、人間の光と闇を静かに描く映画です。
行くと分りますが、北関東は大地も、空も広く、陽が降り注ぐ、一見「光(陽)」だけの土地に見えます。でも、何だか落ち着かない、暗くくもった居心地の悪さを感じてしまいます。
それはなぜなのか、、と先日コミック「虹ヶ原ホログラフ」(浅野いにお)を読みながら(これもまた、重い話ですが)JR宇都宮線にのって考えていたときに、ふと思ったのは
余りに平たすぎて「遠く」や「陰」のない土地は居心地が悪い、ということ。
「遠く」のない、周りだけがすべて、つまり他社がなく自分だけがすべての世界。
「陰」を感じられない、つまり逆に「陽」を認識することもない世界。あるいは「陰」を適切に「陰」と認識することに欠けた世界。
まさに「砂漠」です。
とても明るいけど、逆に暗く、闇を感じるのです。
東京砂漠、という言葉がありますが、きっと正解は「関東砂漠」なんだと思います。
そういう意味で、この舞台設定は秀逸です。
あふれる光の中で光を感じられず、殻に閉じこもる女、そこここらに露呈している悪意と、それにつぶされ自分の殻に閉じこもる男。
今年の「劇場観賞初め」も、ちゃんと自分のテーマに引き付けられて、充実でした。
*物語の重要なパーツである「電車」(上毛電鉄)が、自分が毎日利用している、京王井の頭線3000系のお古なのが不思議な感じ。
*脇役の宮地真緒と井川遥は、自分にとって「一時期善人キャラだったけどそれが一段落ついて、一皮むけてから結構好き」な感じが共通です。
■公式サイト
■作品概要(goo 映画)
■点数:★★★★(5点満点)
@シネスイッチ銀座(1/7 19:15回)